実に残念なことを報じなければならない、それはこのシリーズで取上げてきた、冤罪捜査の犠牲者である近藤秀三郎氏が収監されたことだ。
十六日、高松国際ホテルで近藤氏と会った。上告していた最高裁から棄却の通知がきたという。若林組の広沢こと黄津一が津島警視や横田警部らに請け負わせた冤罪、同じ山口組系である若林組の近藤副長を追い落とすために、すでに癒着していた警察官に賄賂を渡して逮捕したのである。
近藤氏は言った。
「満期であれば三年と四十日、身体を浄化してくる。
病院の先生は二,三ヵ月ずらして少しでも涼しくなって収監されてはどうか、刑務所の中は四十度からの高温になるから、身体には堪えると言ってくれてはいるが…、決まったのならしゃない、こちらから行って来る。
逮捕されたときには腸(ハラワタ)が煮えくり返るようで耐えられなかったが、いまは気持ちの上で大丈夫だ、川上さんには感謝する」。
本紙川上は言葉を失っていたが、「力不足で申し訳ない」
と、やっと応えた。
別れ際、お互いに手を握ったとき近藤氏は、
「三井さんの裁判、無罪を勝ち取れるよう、刑務所の中から、祈ってる」。
二十二日、収監されたと人伝いに聞いた。
なぜ、若林組内の情報が入るのか
今は亡くなったが、香川銀行の大林頭取追及のきっかけとなった、紀尾井商事の松井会長が懐かしい。というのも若林組の内部情報を、この時、すべて聞いていたからである。
若林組広沢こと黄津一幹部は、全国的に有名なスリグループの親分である。
丸亀市に兄が組長をしている広沢組がある。兄の広沢宇一組長に県立中央病院の田村内科部長は弱みを握られ、絶対に逆らえない。どんな無理でも利かせることができる。
また、ここには森という若頭がいて、野心家である。
広沢津一は香川トヨタ会長に喰らい込み、広沢経営のソープ(当時のトルコ)・風俗店に出資させている。
広沢津一はなかなかの切れ者で、暴力団名でも若林組、憂尚会、広沢組の三つを使い分ける。本業は「シャブ」「金貸し」で、鵜飼のように、堺、宮川、藤井、市田らを使っている。原資は広沢が出し、三、四割与えて、六、七割取り上げる。刑務所務めのリスクは鵜にさせ、儲けだけを取り上げる。番町の一等地に建てた豪邸の土地は、香川トヨタ会長が死ぬ間際のドサクサに紛れて取り上げた。豪邸は若林組長に内緒で善協組が建てたが、バレて叱られた。豪邸のことを裏社会では「番町のシャブ御殿」。売人の刑務所務めの犠牲で建てられたから、犠牲者の怨念でまともな死に方はしない…、三越で万引きして…、高松競輪場でスリをして…、香川銀行の川井社長や大林頭取らとの悪事、マルナカの中山社長も…、…。
こんなこともあった。
紀尾井商事の事務所から、本紙川上がいるそばで松井会長が若林組長自宅に電話した。組長婦人が、「ちょっと待ってね、組長はもう一つの電話で寒川町の高木茂議長と話し中やから」…。
香川県警のある現役幹部が本紙川上に、こう問うた。
「川上さん、どうして若林組内部のことが分かるのか?」
「それは若林組にいる関係者が、そっと教えてくれるからですよ。浜ノ町で『誠道塾』という空手道場を経営してましたからね。親和会の子供たちもたくさん来てましたよ。
結局、裏社会からの情報も入りやすい立場、ということですかね。もちろん警察内部からの情報も多いですよ…」。
こんな情報も松井会長から聞いた。
四国大川農協の松原組合長
が紀尾井商事の松井会長に三千万円の不正融資をしていたことを聞きつけて、広沢が恐喝、農協は架空の別途融資を松井会長に貸し付けしたように偽装し、広沢が三千万円を脅し取った。後で若林組長にバレて広沢は除籍になった。
その後、若林組に復帰して、今度は、岡田こと岡根正則に日本士道会の街宣車を運転させ、高松市農協の不正・三千万円を追及、葬祭場建設に絡んで、脇高松市長が、建築や資材など十億の予算を業者と結託していると因縁を付けたようだ。もっともこの時、広沢は逮捕された。
まだまだあるが、紙面の関係上このぐらいにする。
広沢のシャブ御殿には、おとり捜査がよく似合う
おとり捜査に許容条件、最高裁が具体例を初めて提示。
それによると、
@、直接の被害者がいない薬物犯罪などの捜査
A、通常の捜査方法だけでは摘発が困難
B、犯罪を行う意思があると疑われる者が対象
―のすべてを満たすこと。
最高裁がおとり捜査を具体的に認めたのが次の例である。
大麻取引をめぐり、おとり捜査の適否が問われた刑事裁判で、最高裁・第一小法廷(泉徳治裁判長)は、「犯罪を行う意思があると疑われる者が対象であるなどの一定の条件下ならば、おとり捜査を行うことは許容される」との見解を示した。その上で、大麻取締法違反に問われたイラン人被告(36)の上告を棄却し、懲役六年、罰金百万円が確定した。
また先月こんな事件もあった。
大阪市西成区のあいりん地区の飲食店に見せかけた屋台による覚せい剤密売事件で、大阪府警などは、覚せい剤取締法違反(共同所持)などの疑いで、密売グループトップの暴力団山口組系組幹部、山本哲生容疑者(53)ら五人と売り役、十人を逮捕。売り上げは二年間に約十億円を荒稼ぎしていたという。容疑は路上で、赤提灯を掲げて飲食店を装った屋台で、密売目的の覚せい剤を所持していた疑い。 山本容疑者は、配下に金庫番や密売人約三十人を抱えるグループの総元締め。屋台や路上での密売のほか、電話で注文を受けて配達するグループに分け、それぞれに責任者をおいて密売の多角経営≠行っていた。
大阪市と高松市との違いはあるが山本容疑者の手口と、広沢の手口は、配下に金庫番を抱える以外はよく似ているのではないか。密売人を抱えるグループの総元締め。それぞれに責任者をおいて密売の多角経営を行っているとこなど。ただ根本的に違うのは、広沢の方が山本容疑者より老獪である。なぜなら、広沢は屋台ではなくソープを経営してシャブを密売。担当の警察官にも飲ます、抱かす、掴ます、で骨抜きにしてしまって、シャブで儲けた資金は必要経費として警察官に流し込んでいた節がある。いまだに香川県警が若林組を本格的に捜査できないのは、この広沢が長年掛かって築いてきた腐敗警官の扱いである。
女を抱かしたときには情交の最中をビデオで撮影。金を手渡した時には録音テープ。若林組への告訴、告発、捜査記録などは腐敗警官に届けさせ、すべて保管している。
本紙への発砲、鉄パイプ事件がいまだに解決しないのは、腐敗警官の動かぬ証拠を握られているからである。
ああ、情けない。
もはや、健全警官による「おとり捜査」を、早速ためしてはどうだろう。
反社会的勢力を代理店に利益を優先させる日本興亜損保
先月二十一日、金融庁の八階会議室で総務企画局企画課・安居保健企画室長、橋本生命保険係長、それに監督局保険課・西岡課長補佐と面談した。
室長らの話では、暴力団岡根の問題は個別の問題で、国の法律を直接当てはめるようなレベルでもない。各企業が会社内の内規で対応する問題である。常識的に、拳銃を新聞社に撃ちこんだり、覆面をして鉄パイプでマスコミを襲うようなグループに所属している組員を、日本興亜損保さんが代理店登録するとは考えにくい。どちらにしても日本興亜さんの方に注意を喚起する程度の話はしときます、ということであった。
(先月十三日付産経新聞)
『兎の耳』という欄に、生保との提携奏功とあった。
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「生命保険会社との販売提携が功を奏し、今期の業績は好調に推移している」と、笑顔で語るのは日本興亜損害保険の松沢社長。
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損保業界では、主力の自動車保険の販売が新車販売台数の落ち込みなどの影響で低迷しているが、同社は明治安田生命保険と太陽生命保険の二社に損害保険を供給している効果により、今年四月からの保険料収入が大きく伸びた。「今後も顧客や代理店のニーズをしっかり押さえ、競争力ある商品を提供していきたい」と意欲を示す。
金融庁の安居室長の話と、日本興亜損保の松沢社長の話しは、ぜんぜん違うではないか。
今期の業績が好調であるので、「今後も顧客や代理店のニーズをしっかり押さえ、…」というのが気になる。
岡根のような代理店のニーズをしっかり押さえられたら、被害者である本紙川上の家族はどうなるのか。
社団法人日本損害保険協会の「損害保険募集人教育テキスト」の「代理店の役割」の条項には、「代理店が保険会社に代わって保険契約の締結を行った場合には、その法律効果はすべて直接に保険会社に帰属」とある。
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つまり代理店の勧誘行為は日本興亜損保そのものが勧誘したのと同じことであるということになるのではないか。
松沢社長が日本興亜損保に保険料の収入さえもたらしてくれるのなら、代理店が反社会的勢力であろうが、マスコミに対して、発砲を予告した右翼機関紙の編集責任者だろうが関係ないという考えなら、報道の立場から看過できないではないか。
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暴力団幹部を公判前に保釈
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岡根こと岡田一彌が相談役をしている、日本士道会の松下浩文会長が坂出署に先月五日逮捕された。
先に、日本士道会の高畠、後に正木が逮捕されたので、本紙川上は若林組の関係者であるだけに発砲、鉄パイプ事件の解決を期待していた。
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しかしその期待は甘かった。
というのは松下が拘留23日で保釈になったからだ。
常識的に現役暴力団で、類似事件を繰り返しているのであれば、一回目の公判が済むまえに保釈されることはない。
まだ腐敗警官の影響があるのではないか。
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