6月29日、経済界では株主総会集中日として知られる日である。香川銀行の総会もその日行われた。その詳しい内容は、別項に譲るが、とにかく今年の同行の総会ほど、あらゆる意味を包み込んだものはない。
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「香川銀行における不祥事は文字通り、砂の真砂、といった状態です。
この一カ月余り、本当に途切れることなくいくつもの不祥事が明るみになった。業務上横領、不正送金、そして不正融資。銀行の犯罪を余すことなく実行してきたわけです。
それだけならば、他の銀行にだってないわけじゃない、という指摘だってあるかもしれません。しかしですね、これら銀行犯罪のオンパレードをいずれも隠し込んでいた、ともなれば、そういう銀行はかつて一行たりともないわけです。
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そういう意味では香川銀行の悪辣さは、少なくとも邦銀のなかでは際立っている、ということですね」。
こう語るのは、金融庁監督局幹部のひとりである。同幹部が続ける。
「私達にとってみれば香川銀行の連続した不祥事というのは、強(あなが)ち珍しいことではないのです。
隠し込まれた不祥事 次々と明るみになってきた!
それはどういうことか?
それは言うまでもなく、これまで四国タイムズ紙が渾身の告発をしてきたからなんです。私達は同紙の実に生真面目な愛読者なのです(笑)。
それはそれとして、四国タイムズのこれまでの告発が、香川銀行の不祥事を容赦なく報じてきたことは、今、ここでお話ししても全ての読者が知っていることですから、詳しくは言いません。ただ、香川銀行の連続した不祥事の累積された隠蔽、というのは、実は四国タイムズに知られることを回避するためだったのです。逆に言えば、四国タイムズに不祥事のひとつでも知られることは、彼らにとってそのひとつひとつが、まさしく致命的負傷を喫する、ということだったのです。
私達は、中央からその実態を手に取るように把握していました。だから、私達は、四国タイムズの愛読者、といったでしょう?(笑)」。
ジョークを交えながら話すこの幹部だったが、それでも香川銀行における不祥事の数々には、もはや打つ手なし、というようなイメージを抱いているようだった。
「四国タイムズに知られたくないばかりに、香川銀行は、常日頃から不祥事を隠す体質が定着してしまったのです。私達は、監督及び主務官庁としてこの点に注目していました。
何故、香川銀行は、四国タイムズに不祥事が知られることをこれほどまでに恐れるのか?
この疑問が、最終的に、私達だけでなく、中央で言えば、警察庁、それに、検察庁が、事実上初めてスクラムを組める体制を創り上げた、のです。
要するに、銀行のこの不祥事は、地元暴力団に対する不正融資が発端で、これは、私達金融庁と警察、ですね。
次に、その当の暴力団の悪行を事件にしないで隠し込む。これは警察マターです。
一方では、行政面に食い込んだ銀行や暴力団は、行政担当者を籠絡していく。ここでは警察よりもむしろ検察、という捜査機関が出張ってきます。
これらの事案は全て、銀行のカネを原資に、もっと具体的に言うと、香川銀行のカネを源として、行われていく。そして、その地域は暗黒地帯となってしまう。
実際、四国タイムズがなければ、間違いなく香川県、讃岐は、暗黒の世界に埋没していたでしょう。それだけは断言しましょう」。
随分と力の入った証言ではある。
全ての悪の資金源となっていた 香川銀行の腐敗の実態
つまりこうなのだ。
これまで本紙が丹念に曝いてきた我が讃岐における、悪の環状(ビシャス・サークル)は、確かにこの金融庁幹部の言葉にあるように、地元銀行、すなわち香川銀行から捻出されていたカネ絡みであったのだ。銀行が資金のバックボーンを担っているだけに、それは潤沢である。その潤沢なる資金をビシャス・サークルに属している人々は貪るようにして喰い荒らした。
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そのハイエナのような連中は、ひとつは、地元有力暴力団である若林組であった。
そしてもうひとつが、その若林組の用心棒と成り下がっていた、香川県警察本部のなかに巣くっていた、津島グループだったのだ。
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彼らは、若林組のそこにある事件を、実に丁寧に押さえ込んでいた。そこで傷害事件が起ころうとも、不正融資が起こっていようとも、眼を瞑る。見て見ぬ振りをするどころか、最初から見てなどいない。
その余りに信じがたい職務に対して、今度は、若林組から香川県警の腐敗した用心棒達に、お小遣いがでる。その原資は言うまでもなく、香川銀行なのである。
この流れは、最後の部分は警察官だけでなく、行政に携わる幹部、ということもある。
いずれにしても、香川銀行という堂々たる金融機関があってこその、暗黒の状況なのである。これでは、真面目に預金をしている人達にとってはたまらない。預金者というのは、その銀行の債権者なのである。その債権者を平気で裏切る行為を長年に渡って操り通してきたのが、他ならぬ香川銀行であったのだ。
そこで立ち上がったのが、本紙川上社主であったということになる。川上社主は、平成六年九月号からこの銀行を金蔓とする悪の構図を見抜き、四国タイムズ紙上において、果敢に表に出してきた。
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そしてその最高峰の記事となったのが、
『大林頭取側に殺人依頼の疑いも 実行犯は若林組か』 のタイトルを冠した記事であった。
そしてそれが、川上社主に対する刑事事件上の名誉毀損ということで告訴がなされた。
「今から思えばあの告訴は実に無謀でした。刑事事件で告訴してしまえば、それで川上氏の言論を封じ込められる、と思ったのです。株式を公開している厳然たる銀行としては、実に浅はかな行為でした」。
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こう言うのは、別の金融庁幹部である。
無謀だった大林元頭取の川上社主への刑事告訴
「あの裁判は私達金融当局の間でも、密かに注目されていました。
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当時は銀行がそのような酷いことをするわけもない、という裁判官の思い込みなんかもあって、結果的には、実に杜撰な判決(最高裁、懲役10カ月・執行猶予3年)となりましたが、今はもう違います。
いかに銀行であっても、悪いことは平気でするし、それを隠すためには暴力団や警察などを平然と使う、ということがようやく判ってきました。
私達はいずれそういう時代が来るとは思っていましたが、あの時は確かに四国タイムズが時代のもっと先を走っていた。早すぎた告発だったのかもしれません。
しかし、今はようやく時代が川上社主に近づいて来た、といっていいでしょう。
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だから今ではあの時の川上社主の行為は、私達の間でも、実に立派なる問題提起だった、と評価されているのです」(同)。
弛まぬ意志貫徹 我が讃岐に光を投げ掛ける
そして、先月29日に行われた香川銀行の株主総会で、その時代を先取りしていた本紙のスピリットがようやく陽の目を見た、といっていい。長きに渡って銀行を牛耳ってきた大林ファミリー(大林元頭取)は、退き、人事も刷新されつつある。
今年の香川銀行の株主総会が、これまでのあらゆる意味を盛り込んだものであるというのは、まさしくこのことなのである。
今ようやくこの讃岐にも中央からの支援を含めて、曙光が当たりつつある。
もちろん、これからも四国タイムズは、正義の追及にいささかの怯みも見せないで邁進する。
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